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ローコスト住宅は寿命が短いというのは本当?
ローコスト住宅というからには、数ある住宅設備の内、いくつかの設備について安く利用できるものを採用していますが、住宅の寿命にどのような影響を与えるのでしょうか?そもそも、ローコスト住宅は寿命が短いのでしょうか?
ローコスト住宅だからといって寿命が短いわけではない
住宅を設計するにあたり、どのような素材を採用しているかによってそれぞれの素材の耐用年数が短くなったり、長くなったりと言ったことは考えられるでしょう。例えば、外壁材についていえば現在の一般的な新築住宅で主流となっている窯業サイディングを採用した場合、10年~15年程度で塗装をする必要があるのが一般的です。一方、外壁にタイルを採用すればメンテナンスフリーで半永久的に利用できると言われており、初期費用は高くなりますが長い目で見たら後者を選択した方が経済的にお得となる可能性もあります。とはいえ、住宅そのものの性能という視点でいえば両者に大きな違いはないともいえます。そもそも窯業サイディングは軽くて丈夫、安価なことが理由で多くの住宅で採用されている素材であり、この素材を採用したことが原因で住宅の耐久性が落ちるということはないといってよいでしょう。また、ローコスト住宅とはいえ建築基準法の基準を守るのはもちろん、完成した住宅で住宅ローンが利用できるよう、フラット35の品質水準はクリアしているのが一般的であり、一定以上の耐久性は確保されているのです。なお、後述しますが、住宅の寿命には法的な寿命と物理的な寿命、経済的な寿命の3つがありますが、ここでは「いつまで人が住めるか」ということの基準である物理的な寿命を中心にお伝えしています。
寿命が短いと言われることがある理由
それでもローコスト住宅の寿命は短いと言われることは少なくないようです。これについては、主な理由として価格が安い=住宅の性能も低いというネガティブなイメージがあることが考えられるでしょう。しかし、次にご紹介する通り、ローコスト住宅は住宅設備の性能を落とすこと以外にさまざまな工夫を凝らして低コストを実現しています。
ローコスト住宅が安い理由
ローコスト住宅を建てる会社では、以下のような工夫を凝らすことで低コストを実現しています。
- 資材の一括調達
- 広告費や人件費の削減
- シンプルな間取り
まず、資材についてはまとまった数をまとめて発注することで安く仕入れられることは想像しやすいでしょう。ローコスト住宅は建物の仕様等をあまり変更できないことが多いですが、これは同じタイプの木材や住宅設備を利用することで単価を下げているからです。また、総合展示場に出展したりチラシやTVCMを打ったりする広告費用を抑えることや、営業や設計にかける人件費を抑えることなどにより費用を抑えることもできます。その他、建物の間取りを工夫することで建築費を安くすることもできます。例えば、同じ延べ床面積でも長方形のものと正方形のものとでは、正方形のものの方が壁の面積を少なくできるため、費用が安くなります。また、できるだけ凸凹がでないようにしたり、1階と2階の面積が全く同じ総2階の間取りにしたりすることで費用を抑えられるのです。こうしたことを積み重ねていくことで、住宅性能や耐久性は保ちつつ、コストを抑えた住宅を建てることが可能になるのです。
そもそも家の寿命の定義とは?
家の寿命といっても実はいくつかの視点から見ていく必要があります。ここでは、そもそも家の寿命とは何を指すのかについて解説していきます。
家の3つの「耐用年数」
家の寿命は以下の3つに分けることができます。
- 法的な耐用年数
- 物理的な耐用年数
- 経済的な耐用年数
それぞれ見ていきましょう。
法的な耐用年数
住宅は新築してから時が経つほど価値が落ちていきます。住宅は所有していると固定資産税が課され、売却して利益が生じると譲渡所得税が課されますが、この時、住宅の経年劣化分を差し引く必要があります。このことを減価償却といい、木造や鉄骨造、RC造など建物の構造毎に定められた耐用年数があります。
構造 | 事業用 | 非事業用 |
---|---|---|
木造 | 22年 | 33年 |
鉄骨造 | 34年 | 51年 |
RC造 | 47年 | 70年 |
耐用年数というと上記の法的耐用年数に着目しがちですが、上記はあくまでも税金計算上の耐用年数であり、物理的耐用年数や経済的耐用年数とは異なることを理解しておくとよいでしょう。なお、住宅ローンやアパートローンの融資の際には法定耐用年数を参考に借入年数が設定されるのが一般的です。
物理的な耐用年数
物理的な耐用年数とは実際に住宅に何年住めるかというもので、これには木造住宅で60年住めるといったものから100年以上住めるといったものまでさまざまな研究データがあります。ただし、日本の住宅の平均寿命については、27年というデータがあり、アメリカやイギリスなど欧米では100年前後であるのと比べて非常に短くなっています。これは、戦後の経済復興期にとにかく住める家を建てる必要があり、住宅の寿命が短くなってしまっていたということの他、「新築信仰」や「スクラップアンドビルド」の考え方が根底にあると言われています。欧米の場合、石造りの住宅が多いのに加え、住宅に永く済むためにリフォーム等を繰り返し、古くなった住宅が中古住宅市場に高値で流通されやすいといった文化があります。一方、日本の場合は新築住宅に住みたいという人が多く、新築から中古になるだけで1割~2割程価値が落ちると言われています。こうしたこともあり、古くなった住宅はリフォームして永く住むのではなく、解体して建て替えすることが多く、このことが平均寿命27年という、実際の建物の寿命より短い期間となってしまっていることが考えられるのです。
経済的な耐用年数
最後に経済的な耐用年数について見ていきましょう。上記で少し触れていますが、日本の住宅市場においては新築住宅の人気が高く、中古住宅は価値が低いと見られる傾向にあります。一般的に新築住宅が購入されると、例え築浅であっても新築住宅より1割~2割程価値が下がるのに加え、築年数が古くなるほど価値は落ちていくのが一般的です。戸建住宅の場合、築30年を超えるような物件は土地値で売買されることが多く、購入者は建物を解体して建て替えすることを目的に購入を検討することも多くなっています。マンションの場合、築30年を超えると取引価格の減少は緩やかになっていく一方、建物が古くなることで減価償却費の負担も大きくなりやすく、売却は一層難しくなっていきます。ただし、少子高齢化の進む日本において、これまでのような新築住宅をどんどん建てるような姿勢だと空き家がどんどん増えていくことが予想され、このことを防ぐため、国は中古住宅の流通を活発化させるための政策を取っています。まだまだ新築信仰が強いことに変わりはありませんが、特に都心においては地価が上がり、新築マンションの価格が高騰していることもあり、中古マンションの取引量が新築マンションの取引量を追い越すという減少が起こっています。こうした傾向が続くことで、中古住宅の経済的価値は今後高まっていくことが予想されます。
自分の中で寿命の定義をはっきりさせること
上記通り、住宅の寿命は3つの種類に分けることができますが、寿命を考えるにあたってはどの耐用年数で考えるかをはっきりさせておくことが大切です。例えば、将来的に売却を考えているのであれば経済的な耐用年数を考えるべきでしょうし、住むだけであれば物理的耐用年数を考えておけばよいでしょう。また、売却を考えているのであれば、買い手が住宅ローンを組むことを想定して、法定耐用年数についても考慮する必要があります。
家の寿命は何で決まる?
法定耐用年数は変わりませんが、物理的耐用年数や経済的耐用年数は、住宅をどのようにメンテナンスしていたかによって寿命を長くすることもできます。ここでは、家の寿命は何で決まるのか見ていきたいと思います。
建材の耐久性
住宅の構造材にどんな木材を採用するかで、寿命が変わることがあります。例えば、木材を乾燥させてから使用する乾燥材を採用することで、住んでから木材が収縮する率を抑えることが可能になり、このことが将来的に建物の耐久性を高めることにつながります。その他、外壁材や屋根材にどのような素材を採用するかで、定期的なメンテナンスが必要かどうか、また何年程持つのかといったことが決まります。
建築作業の質
住宅を建てるにあたり熟練した棟梁に仕事を頼めるかどうかも重要なポイントとなります。同じ材料で、同じ建築費をかけて作っても、担当する棟梁によって仕上がりが変わってしまいます。例えば、1つ1つの建築材が丁寧に組み合わされていない場合、将来的にゆがみが生じることにより外部から湿気が入り込み、構造材が腐食してしまうといった可能性があります。
定期的なメンテナンスの有無
住宅は購入した後も定期的にメンテナンスすることが大切です。例えば、外壁材に窯業サイディングを採用した場合では、素材によって10年に1回程度メンテナンスする必要がありますが、傷が見られるのにも関わらず補修や塗り替えを行っていない場合、雨が降ることによって外壁材の隙間から構造材まで水が入り込み、構造材の腐食につながる危険性があります。
家にするためのコツ
最後に、長寿命の家にするためのコツを見ていきましょう。
建築前のコツ
躯体や材質をしっかりこだわる
先述の通り、躯体を構造材にしたり、メンテナンスフリーの外壁材にしたりすることで建物の住宅を長くすることにつなげられるでしょう。もちろん、初期費用が高くなってしまいますが、長期的にみたときにどちらがお得かという視点を持つことが大切です。
点検やリフォームを考えた作りにする
住宅建築時の設計段階で、点検やリフォームのしやすい作りにすることも重要なポイントです。この辺りは住宅会社の設計士とよく相談しながら進めていくとよいでしょう。
住宅性能評価制度を参考にする
住宅新築時に住宅性能評価制度を利用して評価書を取得しておくと住宅の耐久性だけでなく、維持管理状況等も知ることができます。また、新築時に住宅性能評価制度を利用して評価書を取得しておくと、将来売却するときにも耐久性等の証明となりやすく、高値での売却を実現しやすくなります。
実績のあるメーカーに依頼する
寿命の長い住宅にするには、耐久性の高い住宅設備等を選ぶことはもちろんですが、実績のあるメーカーに依頼することも重要なことです。できれば数十年の歴史があり、過去に建てた住宅のアフターメンテナンスもしっかり行っているような会社だとよりよいといえるでしょう。
住んでからのコツ
家の異変を早期に発見し対処する
家は住み続けると少しずつ劣化していくものです。例えば外壁の一部がはがれているなど異変を感じたら、「その内対処しよう」とするのではなく、発見した段階ですぐに対処することが大切です。日頃から家に異変がないかどうか気を掛けておくことも意識しておくとよいでしょう。
空き家状態にしない
住宅は人が住まなくなったらすぐにだめになるものです。1~2週間程度の長期旅行程度であればそう大きな問題にはなりませんが、例えば転勤後、将来的に家に戻る予定で空き家にしておくといったケースでは、少なくとも2週間~1カ月に1回程度は誰かが家に戻り、メンテナンスすることが大切だといえるでしょう。
ローコスト住宅は寿命が短いとは言えない
ローコスト住宅の寿命についてお伝えしました。ローコスト住宅とはいえフラット35の品質基準はクリアしているのが一般的で、必ずしも他の住宅と比べて寿命が短いというわけではありません。ローコスト住宅に限らず、少しでも長く家に住みたいと思うのであれば、本記事でご紹介した長く家に住むコツを参考に家づくりを進めることをおすすめします。
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