注文住宅の窓選びで失敗しない3つのコツとは

注文住宅を建てる際に、家造りのアレコレを考えるのはとても楽しいものです。ところが多くの人は、間取りやキッチンのことばかり考えて、窓に気を向けることはほとんどありません。しかし、「なんか部屋が暗い………」「窓の周りがすごく寒いんだけど……」というように、あとから大きな不満につながりやすいのが「窓周り」なのです。そこでこの記事では、窓の役割と種類、窓選びで失敗しないコツなどについて、わかりやすく解説していきます。この記事を最後まで読めば、もう窓周りで失敗することはありません。注文住宅を検討中の人は、ぜひ参考にしてください。

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家の窓の役割や種類

住宅には必ず窓が設置されていますけれども、どうして窓が必要なのか、その理由をしっかりと理解している人は意外に少ないものです。窓を設置する場所や目的によって、適切な窓の種類は自然と決まってきます。この章では以下の3点について詳しく解説していきます。

  • そもそも窓にはどんな役割がある?
  • 窓の構造による種類
  • 窓の素材による種類

そもそも窓にはどんな役割がある?

住宅における窓の役割は、大きく以下の3点です。

  1. 採光
  2. 換気
  3. 視認

詳しく解説します。

1.採光

窓のもっとも重要な役割のひとつが、太陽の光を室内に届ける「採光」です。居室(人が継続的に使用する部屋)の窓は、床面積の1/7以上の面積が必要であると建築基準法で定められています。また、採光の量だけでなく、光の差し込む方角も考慮しなくてはなりません。一般的に西側の窓は、日差しが眩しく、急激な室温の上昇を招きます。できるだけ、主要採光部が南側となるように計画しましょう。

2.換気

窓には室内の淀んだ空気を排出し、新鮮な空気を取り入れる「換気」の役割もあります。採光と同様に、居室の換気についても建築基準法で定められており、床面積の1/20以上の開口部が必要です。なお、窓を一カ所だけ開けても、空気はうまく流れていきません。必ず対面に窓を設けて、それぞれに給気と排気の役割を持たせてください。

3.視認

どんなに快適な空間でも、地下室のような外部がまったく見えない空間には、人は長時間いられません。周辺の様子や天候などを窓から確認できるというのは、私たちが考えている以上に重要なことなのです。また外部からの侵入者をチェックする役割もあります。安心して生活するためには、こういった機能も欠かせません。以上の3点は、どれかひとつ欠けても快適な住空間が成り立たたない、非常に重要な要素です。窓の大きさや位置は、設計の担当者とじっくりと相談して決めるようにしましょう。

窓の構造による種類

窓の役割がわかったところで、窓によく使われる3つの構造について解説していきます。

引き違い窓

2枚のガラス窓を互い違いに開閉するタイプの窓です。左右どちらからでも開け閉めができ、使い勝手がよいので、もっともよく使用されています。「掃き出し窓」とよばれる床までつながった引き違い窓は、出入りが自由にできることから、1階のリビングなどに用いられることが多いです。ただ構造上、どうしても隙間ができやすく、ほかの種類に比べて気密性は悪くなります。また一般的すぎてデザイン的につまらないという人も多く、デザインにこだわる人ほど敬遠する傾向があるようです。

はめ殺し窓

はめ殺し窓(FIX窓)は、文字通り、開閉ができないタイプの窓になります。開閉できないので、もちろん換気の役割はまったくありません。主に採光を目的として、天窓などに利用されることが多いです。また、開閉の必要がないため、丸形やガラスブロックのような変形タイプもよく使われます。建物内部よりも、外部から見たオシャレなイメージが、このハメ殺し窓の最大のメリットでしょう。ただし、夏場などに日差しが強すぎて、はめ殺し窓では室内の温度が高くなりすぎる場合も考えられます。一つひとつが小さく、カーテンでの遮光が困難なので、なんらかの日差し対策は欠かせません。

すべり出し窓

すべり出し窓とは、片側を軸にして開くタイプの窓です。すべり出し窓は、縦軸でドアのように開く「たてすべり出し窓」と、車のトランクのように開く「よこすべり出し窓」の2種類にわかれます。両者は同じすべり出し窓でも、性質がまったく異なります。たてすべり出し窓は、90°に開いた窓が風をキャッチしてくれるので、横風の効果的な取り込みが可能です。一方、よこすべり出し窓の場合は、横風を取り込む機能はまったくありません。しかし、開いた窓が庇の役割をするため、よほど強い雨でなければ窓を開けておいても大丈夫です。開けっ放しでも外から中が見えにくく、外部からの侵入も困難なので、トイレや浴室によく使われます。なおすべり出し窓は、吹き抜け上部などの高いところに設置すると開閉ができません。その際は、チェーンやリモコン式を検討しましょう。

窓の素材による種類

住宅の高断熱高気密化が進むにつれて、窓の素材も注目されるようになってきました。窓の素材によって断熱性能が大きく異なるからです。断熱性能で「金属(アルミ)・樹脂・木製」を比較すると、以下のように木製と樹脂の性能がもっとも高いというデータがあります。(YKK AP 開口部の熱貫流率データ※)

  1. 木製or樹脂サッシ+複層ガラス(10mm以上):2.91
  2. 木製or樹脂と金属の混合サッシ+複層ガラス(10mm以上):3.49
  3. 金属サッシ+複層ガラス(10mm以上):4.07

ただし、サッシの選定は、断熱性能だけで決めるものではありません。耐火性能や価格とのバランスも考え、総合的に選ぶ必要があります。※YKK AP「開口部の仕様別熱貫流率」

アルミサッシ

アルミサッシは、樹脂サッシの約1,000倍も熱を通してしまいます。樹脂ではほとんど起きない結露で、窓周りがビショビショになった経験は誰でも一度はあるでしょう。つまり、断熱性という面で見れば、樹脂や木の方が圧倒的に性能は高いわけです。しかし、安価で耐久性もあるため、日本では長いことアルミサッシが使われてきました。そして、今もこの傾向は変わっていません。ただこれから日本では、ZEH(ゼロエネルギーハウス)を標準化していく方針なので、段々と樹脂サッシの割合が増えていくのは間違いないでしょう。

樹脂サッシ

樹脂サッシは塩化ビニール樹脂からつくられていて、上述の通り、熱貫流率がアルミサッシの約1/1000しかありません。結露もほとんどしないので、北海道や東北を中心に、高断熱高気密の家には必ず使用されています。ただし、強度が弱いためにフレームはどうしても太く重くなり、開閉を重く感じる人も少なくないようです。また少し古いデータですが、2012年における日本の樹脂サッシ普及率は、わずか7%しかありません。外部をアルミ、内部を樹脂にする複合サッシを含めても40%ほどにしかならないのです。とはいえ、アルミサッシの項目でもお伝えしたように、国のZEH推進の動きと樹脂サッシの価格の下落によって、これから樹脂サッシの利用数はどんどん増えていきます。ぜひ積極的に検討してみてください。

木製サッシ

木製サッシも樹脂同様、大変断熱性に優れた材質です。(樹脂よりも断熱性が良い)また、木のもつ重厚な雰囲気を好む人も多く、断熱性だけでなくデザインを重視する人にも広く利用されています。しかし、素材が木なのでどうしても腐食しやすく、おおよそ5年ごとに再塗装しなければなりません。元々の価格も樹脂より高いので、コストを重視する場合は採用を見合わせた方が無難です。

注文住宅で窓を考える際のポイント

ここまでの説明で、窓についての知識は一通り頭に入ったはずです。この章では、注文住宅で窓を計画する際のポイントについて解説していきます。窓について考えるべきポイントは以下の5点です。

  • 機能性はどうか
  • 部屋における配置
  • 家全体での数
  • デザイン
  • プライバシー

詳しく解説します。

機能性はどうか

まずはなんといっても、「断熱性」を軸に考えていくべきでしょう。断熱性に劣るアルミサッシを選んだ場合、支出は抑えられますが、代わりに快適性が大きく損なわれます。せっかく注文住宅を建てるのですから、そこは妥協すべきではありません。また、快適性を考えるのならば、「掃除のしやすさ」も忘れないでください。掃除のことを考慮せずに窓の数や配置、高さを決めてしまうと、手が届かなくて掃除ができないといった事態にもなりかねません。

部屋における配置

窓の配置も非常に重要です。部屋によって必要な窓の数や大きさは異なりますが、配置に関してはある程度決まったルールがあります。まず、できるだけ1部屋に2カ所以上窓を設置しましょう。対面に設置できれば、給気と排気の役割が分担され、スムーズに換気ができます。どうしても1カ所しか設置できない場合は、ドアの下部にガラリ(スリット上の給気口)をつくればOKです。また窓の配置は、高さをピシッとそろえるのが基本になります。通常窓の高さや横方向の配置がずれることは考えられませんが、上部に小さなはめ殺し窓を使用する場合は、バランスを取るのが大変です。外から見たバランスをイメージしながら配置を決めましょう。

家全体での数

さきほど、1部屋に最低2カ所は窓が欲しいと言いましたが、あまり窓が多すぎるのも問題です。窓が多すぎると、家具やソファーを設置できない場合があります。あるいは開放的な空間の代償に、いつも外からの視線が気になり、落ち着いて生活ができないかもしれません。また、窓の数が少なくても、大きければ窓が多いのと同じです。窓の大きさを抑えて、小さめの「はめ殺し窓」や「すべり出し窓」を活用するなど、いろいろと工夫をしてみてください。

デザイン

上述の通り、日本では引き違い窓が本当によく使われています。しかし、引き違い窓を多用すると、どうしても安っぽいイメージを与えてしまうものです。言葉は悪いですが、せっかく注文住宅をつくっても、まるでローコスト住宅のように見えてしまいます。出入りする場所でなければ、ぜひもっと変形窓を活用していきましょう。たとえば、縦長や横長のはめ殺し窓を使うと、一気にオシャレなイメージになります。大きな掃き出し窓の上部に、小さいはめ殺し窓を並べるのもなかなかオシャレです。こういったデザインはセンスの問題なので、カタログに掲載されている実例集などを見て、どんどんアイディアをまとめてみてください。

プライバシー

インテリア雑誌に載っているようなオシャレな家は、たいてい窓が大きく開放感あふれる空間になっています。たしかにオシャレなのですが、雑誌のイメージだけで窓の大きさや配置を決めてしまうと、プライバシーの問題が発生するかもしれません。敷地の広さにもよりますが、リビングに大きな窓をつくると、隣の家や通行人の視線が気になり、好きな時にカーテンを開けられないことも考えられます。プライバシーには過剰なくらい気を配って計画を立てましょう。

注文住宅でよくある窓の失敗例

窓の失敗が怖いのは、住んでみないとその失敗に気がつかないことでしょう。設計士さんがプランを出しているから大丈夫だろうという考え方は非常に危険です。ハウスメーカーのプランは、よくも悪くもある程度規格に沿ってつくられるものだからです。この章では、よくある失敗例を3点紹介していきます。

  • 窓の配置における失敗
  • 窓の機能における失敗
  • デザインにおける失敗

気になるポイントがあれば、ハウスメーカーとの打ち合わせの際に、しっかりとすり合わせをおこなってください。

窓の配置における失敗

窓の設置場所をしっかりと計画しないと、上述の通り、さまざまな失敗の起こる可能性があります。以下に配置ミスによる失敗例をまとめておきます。

  • 適切でない窓のサイズにより室温が上昇
  • 窓が1カ所しかないので風通しが悪い
  • 窓が大きすぎて家具を置く場所がない
  • 窓の配置が悪く外から丸見え

こういった配置ミスは、工事完成後にはもはや修正できないと考えておくべきです。したがって、とにかく工事がはじまる前にしつこいくらい打ち合わせをしましょう。上記のような不安点をきちんと設計担当者に伝えてください。

窓の機能における失敗

窓の機能に関する失敗もよく耳にします。なかでもとくに多いのが、断熱性能を後回しにしたために起こる、冷暖房関係のトラブルです。たしかにアルミサッシと樹脂サッシの価格差はおおよそ2倍近くになりますので、アルミサッシを選びたくなる気持ちもわかります。しかし上述の通り、アルミと樹脂の間には1,000倍もの能力差があるのです。なお、サッシの材質だけでなく、窓ガラスの種類でも大きく断熱性能は変わってきます。ペアガラス・トリプルガラス・アルゴンガス入り・Low-E複層ガラスなど、選択肢は意外に多いです。できるだけ高性能なサッシとガラスの組み合わせを選び、光熱費を節約しましょう。また、吹き抜け上部に窓を設置したり、複雑な形の窓にしたりといった理由で掃除がしづらいという失敗談もよく聞きます。何度も繰り返しますが、窓関係のミスはあとから修正ができません。デザインやカッコよさだけでなく、実用性もしっかりと考慮して窓を選びましょう。

デザインにおける失敗

いくら一般的な引き違い窓がオシャレではないといっても、あまりデザイン性の高い窓を使いすぎるとさまざまな不都合が出てきます。まずもっとも多いのが、「掃除のやりづらさ」でしょう。形が変形で凹凸も多い「デザインに凝った窓」は、ホコリやゴミがたまりやすいです。しかもサイズが小さいので1枚ずつ掃除をしなくてはならず、これは想像以上のストレスだと思います。窓に合うカーテンやブラインドが市販されていないというのも、大きなマイナスポイントです。最初は目隠しなど必要ないと思っていても、プライバシーの観点からカーテンなどの必要性に気づくこともあるでしょう。そうなったら、変形窓に合わせてオーダーメイドでつくってもらうしかありません。

失敗を避けるためのコツ

最後に、窓の設置に関する失敗を避けるためのコツを見ていきますが、コツは大きく以下の3点です。

  • 窓ごとに目的を意識する
  • 生活場面をイメージする
  • 多くの事例を参考にする

詳しく解説していきます。

窓ごとに目的を意識する

前の章で説明した「窓の配置における失敗」「窓の機能における失敗」「デザインにおける失敗」という3つの失敗は、窓ごとの目的を意識すればほとんど防げます。窓ごとの目的というのは、上述の通り、「採光」「換気」「視認」でしたね。採光が目的ならば、開閉する必要がないので引き違い窓は要りません。横長や丸形のはめ殺し窓を天井近くに設置すれば、引き違い窓の溝にホコリが溜まることもないでしょう。また6畳の部屋にすべり出し窓を多用すると、内側に設置した網戸が邪魔で、家具を置く場所が取れないことも考えられます。このように、窓の目的を意識すると自ずと適切な窓がわかってきます。それだけでも、窓の失敗はだいぶ少なくなるはずです。

生活場面をイメージする

窓関連で失敗するのは、結局、窓をどう使うかイメージできていないからです。とはいえ、実際に建物ができあがるまでは図面上の話でしかないわけで、たしかにイメージはむずかしいと思います。であれば、今住んでいる住宅での生活を当てはめてイメージしてみてください。「階段に何カ所かはめ殺し窓があればもっと明るくて移動しやすいのに……」といった不満を、そのまま新しい注文住宅にも盛り込めばいいのです。逆に、ここは使いやすいといったプラスの経験も、設計担当者とどんどん共有していきましょう。そうすれば、さらによい家になっていくはずです。

多くの事例を参考にする

上述の通り、生活場面をイメージするのは非常に重要です。しかし、おそらくそれだけでは、アイディアに限界が出てくると思います。カタログや雑誌、あるいはモデルルームなどの事例をたくさん見て、頭の中にアイディアをストックしていきましょう。どんなに経験のあるハウスメーカーでも、あなたとの家づくりははじめてなのです。お客様からの希望が明確であるほど、より良いプランがつくれます。ぜひ、たくさんの事例から得たアイディアを、積極的にハウスメーカーとシェアしてください。

カタログを取り寄せて事例を見てみよう

窓の設置を考える上で、「採光」「換気」「視認」という窓の目的を意識することは非常に重要です。目的さえ理解していれば、適していない窓を設置したり、おかしな配置になったりすることもありません。また当記事では、具体的な失敗事例とその失敗を避けるコツについても詳しく紹介してきました。あと必要なのは、できるだけ多くの事例を見て、窓の設置に関する良いアイディアをどんどんストックすることだけです。まずはカタログを取り寄せて、事例をチェックしてみてください。

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